パロディとしてのヒトラーの『わが闘争』(”Mein Kampf”)

ドイツ人のコメディアン、セルダール・ソムンツ(Serdar Somuncu)さんが、ヒトラー著の『わが闘争』から引用して暗唱朗読し、ヒトラーの繰り広げたプロパガンダの不合理さを証明する。

ケース

ドイツ人のコメディアン、セルダール・ソムンツ(Serdar Somuncu)は、ショー『大殺人者の遺産』(The Legacy of a Mass Murderer) で、ヒトラーの著作『わが闘争』から引用文を暗唱し、ヒトラーのプロパガンダの不合理さを明らかにする。1991年から2001年にかけてショーは、『わが闘争』の販売・購入が法律で禁じられているドイツ、オーストリア、そしてスイスをツアーした。1,428回ショーをこなしたソムンツは、ドイツの公立学校の生徒たちを含む250,000名の観客の前で講演したと言い張り、自分がヒトラーの著作から暗唱を許可されている「唯一の人物だ」と主張している。ソムンツはくり返し、ショーに反対するネオナチ団からの脅迫を恐れ、防弾ジャケットを着て警察の保護を要求した。シュヴェーリンやインゴルシュタットなどドイツの街では、地元の行政政府の多様な党を代表する官僚たちが、『わが闘争』を暗唱するのは常識に反すると声をあげ、ソムンツのショーを妨げようとしている。

バイエルン州の財務省が、2016年1月1日に著作権が切れるまで『わが闘争』の正式な所有者である。それまで、ドイツ、オーストリアそしてスイスにおける『わが闘争』の販売は禁じられている。しかし、本を所有することは禁じられていない。ネット上で『わが闘争』は多数の言語でただでアクセスできる。2016年以降、『わが闘争』の購入を法的に許可するべきか否か討論がある。ソムンツを含む多くの評論家は、本を禁じればそのまわりに神秘的なオーラを築き上げてしまうと指摘する。他方で、実際に『わが闘争』を読めば、その中には馬鹿げたたわごとと「歴史において最も混乱して的を得ていない」ナンセンスが書かれているだけだとすぐわかるだろう、と評論家は言う。他の者は、本の出版は第三ドイツ帝国の犠牲者の思い出を傷つけ、危険なプロパガンダであり、ナチズムのシンボルを再復活させる恐れがあると議論する。バイエルン教員委員会(Bavarian Teachers Association) の会長は、『わが闘争』は高校の歴史の授業で全く取り扱うべきでないと意見を述べる。彼によれば、そうすれば学生が本に興味を持ってしまう危険性があると述べる。

著者の意見

「私は、ショーも(本も)禁じるべきではないと思います。この記事を執筆する前に、Youtubeでソムンツのショーを観ました。ソムンツは『わが闘争』から読んでいるだけではありません。また、ソムンツは、政治的に不正な(politically incorrect) 冗談を並べて無学な観客を笑わせているのではありません。ソムンツのショーは、パロディを通して教育しようと試みるのです。ショーは、人々に重要な歴史的文献を提示して、その文献が今日どのような意味合いを持っているのかを問いかけるため、社会に貢献していると言えます。そして、ソムンツのユーモア感は否定できません。

 

しかし、『わが闘争』が記述する憎悪感と偏見のせいで苦しんだ人が、本からの引用に耳を傾けたくない、そして他の観客の笑いを悪趣味で有害と受け止めるのは当たり前です。人種差別主義や反ユダヤ主義プロパガンダの不条理さを面白がったり、都合よく人種差別や反ユダヤ主義がドイツ、オーストリア、そしてスイスを含む多くの国でまだ存在している事実を忘れるのは、問題ある態度です。

 

他方で、ソムンツのショーのような知的なコメディーは、有害な副作用にもかかわらずそれより多くの利益を持っていると思います。ショーの社会的なディベート及び集団的歴史回想 (public debate and historical memory) への貢献と、より抽象的な芸術的表現力は、この場合、有害な副作用にまさると思います。なぜならば、ソムンツのショーを観に行くか行かないかは、各個人の自由な判断によるものだからです。」

- ―セバスチャン・ヘンプファー (Sebastian Huempfer)

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コメント (0)

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    I agree with Sebastian that no matter what one thinks about the general legality of voicing these opinions (and I agree with Jack here as well), clearly, context is key.
    It is legal in Germany to screen Nazi propaganda movies like ‘Jud Suess’ if they are framed by an appropriate introduction and commentary that furthers sceptical and critical thinking. Clearly, comedy can do the same.

  2. あなたのコメントは承認待ちです。

    Should he be allowed to? Absolutely! Even if he agreed with the poison. And even if the book was outlawed in Germany. What are people afraid of?–that they, and others, have such weak minds that they will be influenced by it?

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      Yes, that’s one argument. It’s probably not the most important one though. What do you think about the other arguments – respect for the victims, a desire to remove the symbols of the Third Reich from all public spaces, the offence this might cause, etc.?

      • あなたのコメントは承認待ちです。

        *the offence this show might cause

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